OCEP第五電算室

この国を今一匹の亡霊が徘徊している――クソネミと言う名の亡霊が。

「全国紙の記者は線量計を持たされ、1mSv/yで配置換えされる」は本当か?

概要

2018年4月8日にスイス・チューリッヒで行われた講演会において、おしどりマコ氏は「今でも、福島に配属された全国紙の新聞記者は線量計を持たされ、年1mSvを越えると異動の対象になる。でも福島の人達はずっと住み続けている」と発言した。

youtu.be

判定

「記者に線量計を持たせ、累積1mSv/yで配置転換する全国紙」は存在する。ただし、この事実のみでは福島県は危険であるとはいえない。おしどりマコ氏はこれを自説の誘導に使用している。

エビデンス

災害と報道研究会「トップが語る3.11」の読売新聞へのインタビュー記事に以下の記載がある。

そこで、福島原発の事故を踏まえて再検討し、政府の基準に合わせる形で見直しをしました。それが現時点[2015 年10 月時点]でも生きているんですね。ちなみに、原発事故で現地に入る記者には線量計を常に持たせるようにしています。


線量計は――今もそうですけども、福島では全員が常に身に着けていて、毎日の線量を福島支局員は夜、支局長にメールで報告をすることにしています。現在もそれは続けていて、支局長は各支局員の線量の累積をチェックしています。


マニュアルの線量をどうするかという検討を始めて、政府の見解も踏まえながら少しずつ見直しをして。最終的には、福島県民と同じ基準にということで、「年間[積算被曝線量が]20 ミリシーベルトを超えない」という基準にしたんですね。それでも超してしまうという場合も無きにしもあらずなので、その場合は2 年間でこれだけというものをつくりました。
―― [新聞各社で基準が]微妙に違う。
長谷川 だと思います。弊社の場合、許容累積被曝量は年間20 ミリシーベルトとするけれども(注1)、それ以上になってはいけないと。基準を超える場合は、福島県外に配置換えをするというルールにしました。ただ、今までのところ、弊社の記者でこの基準を超えて配置換えをしたケースはまだありません。


(1)なお、読売新聞社では、現在のマニュアルの規定では、長期取材の場合は、原則として上限を「年間1ミリシーベルト」としている。

考察

確かに事故後20mSv/y、そして現在は1mSv/yで配置換えを行う規則は存在する。ただし、このことだけでは福島県は危険、もしくは読売新聞は危険と考えていると結びつけることはできない。なぜなら、この記事からは1mSv/yが基準になった理由は述べられていないからである。

推測になるが、基準が改められた理由は2つ考えられる。

  1. 20mSv/yでは不当に高いと判断した
  2. 20mSv/yも被曝しない状況になった

少なくとも、20mSv/yを超えて被曝した記者は居なかった。そして2018年現在、避難区域を除く県内で1mSv/y外部被曝する方が難しい。このことは、モニタリングポストやガラスバッジ測定結果からも明らかである。

福島県放射能測定マップ

平成29年度第1回個人積算線量測定(29年4月~29年6月)結果 - 南相馬市

逆に言えば、1mSv/yへの変更は、より福島県外部被曝を気にしなくてもよい環境に近づいた結果が表れた、とも考えられる。

そもそも、計画被曝状況における1mSvは安全か否かの閾値ではない。上記の情報を隠して「それでも福島県民は~」と危険性を強調するおしどりマコ氏は、ミスリードを狙っているといわざるを得ない(し、そう考えるならジャーナリストらしく取材すべき)。

参考

[コラム]年間1ミリシーベルトと20ミリシーベルトの話 – とみおか放射線情報まとめサイト