対象言説
対象とした言説は、2018年4月7日にスイス・チューリッヒで開催された講演会「福島原発事故7年後の日本の原発と事故の影響」でのおしどりマコ氏の発言。
講演会での発言は次のようなものである。
2017年の水道水のセシウム134というのは、実は東京だけ出ています。
実は東京の東の方の水道、浄水場が、かなり汚染されているのです。
このような状態のまま、2年後に東京オリンピックが行われるということは、私は取材をずっとしていてとても疑問に思います。
選定理由
おしどりマコ氏は2019年7月に予定されている参議院選挙において、立憲民主党から比例候補として擁立されており、これまでの発言に注目が集まっている。
特にこの発言は Twitter 等で「デマ」のいち例として挙げられるものである。
判定
ミスリード
判定基準・及びレーティングはNPO法人ファクトチェック・イニシアティブが公開している「ファクトチェックのガイドライン」及び「ファクトチェックのレーティング基準」を参考にしている。
判定理由
まず、講演会中におしどりマコ氏が参照しているデータ、及び浄水場について整理する。
このデータは、おしどりマコ氏も講演中に紹介している通り、原子力規制委員会が発表している上水のモニタリング結果である。
このデータから、「東の方の浄水場」とは葛飾区の金町浄水場であること、2017年6月の上水に含まれていた放射性セシウム(Cs134、Cs137の合計)は 0.00415 Bq/kg であることがわかる。
2012年4月以降の飲料水の基準値は 10 Bq/kg であるため、この基準に照らし合わせれば、水道水は飲用に問題ないことがわかる。
どのデータから「かなり汚染されている」と発言しているのか
Cs134 及び Cs137 の測定値については講演会スライドからも確認*1できる。
Cs137 の測定値について、同公演会においておしどりマコ氏はこのように説明している。
セシウム 137 は福島の周辺から極微量ですが水道水から出ています。
また、Cs134 の測定値の説明に入る前には、 Cs134 の半減期が2年と短いことを強調*2している。
よって、「東京の東の方の浄水場がかなり汚染されている」とは、半減期を超えた2017年時点でも Cs134 が検出されている、という文脈で語られたものと推測される。
東京のみが他県の浄水場と比べて Cs134 が検出されたことにのみ着目すれば「汚染されている」とする見方もできるが、飲用には問題ない数値であり、このデータから五輪開催が疑問視されるほど「かなり汚染されている」とするのは難しい。よってミスリードと判定した。
*1:飲料水の基準値について説明があったかは確認できなかった
*2:おしどりマコ氏は Twitter でこのデータを取り上げた際も、 Cs134 が東京のみから検出されたことを気にしている。 https://twitter.com/makomelo/status/925940180887904256