OCEP第五電算室

この国を今一匹の亡霊が徘徊している――クソネミと言う名の亡霊が。

れいわ新選組山本代表、古い資料でロシア擁護を展開。スプートニク記事の流布には触れず。

前置き

3月24日、れいわ新選組山本太郎代表が記者会見において「英紙デイリー・テレグラフ」のものだとして紹介した記事が、ロシア国営通信社であるスプートニクによるものである事例があった。

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その資料が再び使用された件についてまとめる。今回は検証ではなく、筆者の意見や印象が多分に含まれる記事となる。

本題

【街宣LIVE】れいわ新選組presents 山本太郎桜を見る会 神奈川県溝の口駅デッキ(2022年5月15日)より引用

5月15日、衆議院議員を辞職した山本太郎代表は、川崎市溝の口にて「れいわ新選組presents 山本太郎桜を見る会」と銘打った街頭演説会を行った。

途中の質疑応答にて「ロシアはドンバスのロシア系住民を救出しているだけ。彼らを見捨てるのか?」という質問に対して、3月24日で使用した資料を一部使用して、実際にウクライナ政府が関与した虐殺行為はあったことを説明した。なお、3月資料と比べて、西側有名メディアが伝えたと主張する「ウクライナにおけるナショナリスト武装組織」に関するスライドは展開されなかった。

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書き起こし

質問(下線部は引用者による追加)

太郎さんはロシアに関して、基本的には侵攻はやめるべきだ、っていう立場であるということなんですけど、
ロシアは好きでそうやっているわけじゃなくて、ロシアにもロシアのそうしなきゃいけない理由があってですね、
ドンバスの地域で虐殺が行われていると、それをちょっとドンバスの地域にいる人達というのはロシア語を話すロシア人らしいんですね。
それをちょっとロシアとしては許せなくて、ロシアとしては侵攻しているという認識はなくてですね、救出作戦をしているという認識らしいんですね。
で太郎さんがロシアに侵攻をやめろと言う発言はですね、そこの人達が虐殺されていることに関しても見捨てるってことだと思うんですよね。
それに関してはどう思われます?

山本太郎代表による回答(下線部は引用者による追加)

今の質問の内容を理解できない方、9割ぐらいいらっしゃると思いますよ。おそらく。
で、ロシアにも理由があってウクライナに対して軍事侵攻、侵略したんだっていうお立場の話ですよね。理由があるんだと。
それ東側、それドンバスという地域でこれまでロシア系住民という部分が殺害されたりとか、そのような拷問にあったりとかっていうような話があったからそれを救出するという立て付けのものとに、今回このようなことにつながってるんだって言うお話ですね。
で、えっと、今の話聞いたら陰謀論だとかそれは違うみたいな人達いるんです。テレビ新聞とか、そういうことはあまり言わないから。 ただ事実関係としてちょっと確認、まずして行きたいと思います。すみません。
世界的なですね、NGOなどの報告、国際人権団体、国連などによるウクライナ東部の人権状況報告。 これ今じゃないですよ、随分前の話です。
 
〔スライドの解説のため中略〕
 
何もなかったら100万人の人間が避難民になろうとはしないんですよ。
だから確かに東側ではウクライナ政府が関与したロシア系住民への迫害というのは確かにあったんだろうと。
これ陰謀論でもなんでもなくてヒューマンライツウォッチだったりだとか、いま数々紹介してきたような国際人権団体がその報告をずっとしてきてるんですよ。
そのことに対してみんな知ってたかってっつったら、私は知らなかった。皆さんどうです?
知らされてなかった、知ってた人もいるかもしれない。でもテレビ新聞とかではこういうような前提は全く共有されませんよね
ロシアが一方的になにか始めた。確かにロシアの軍事をもって他国に侵攻するっていうのはやっちゃいけないことなんですよ。
だからこの部分に関しての非難を言わないっていうことはできないんです。残念ながら。
もちろんその軍事侵略、軍事侵攻って部分に対しては最大限の非難を私達は言いながら。まずやらなきゃいけないことはウクライナとロシアの停戦なんですよ。停戦の合意なんですよ。
それを促進するために日本側が促進できるような動きを、国際社会のなかでやるように、政府がその使命感を持って働くようにってことを訴えかけてるんですね。
なのでおっしゃりたいことはわかるけれども白黒つける話じゃないんです。今のところ。
白黒つけてたらいつまでもつかなくていつまでもウクライナ人も、そして戦争やりたくないのに現場に行かなきゃいけないロシア人も、リスクがあってロシア国内で反対の声を上げて、不都合な目に合うような人達も守らなきゃいけないわけだから。
これとにかく停戦なんですよ。停戦合意をするためには双方の話を聞くしかない。まずそっからなんですよね。
なので軍事侵攻、他国に軍事をもって立ち入るっていうことに関しては最大限のNGなんですよ。
そこに関して言わないっていうことはない。それに対しては言う。
そしてどちらが悪でどちらが正義かなんてことは決められない、だって私達知らないこと多すぎるんだから。
わかったようなことを言う人がわかっている気になってるだけですよ。
だからこそ当事者たちの話をさせなきゃいけないわけで、そのためのテーブルを一刻も早く国際社会でセットアップしていく。
たとえそれが一回崩れたとしてもまたすぐに、機会をなんどもつくっていきながら先に行けばこの話し合いをやっているときには双方ともに武力攻撃は一度やめるとか、そういう段階に持っていかないと人の命がどんどん奪われちゃうんですね。そういうことでした。
すみませんありがとうございます。

スライド・資料について

3月の会見で使用された資料では「ウクライナにおけるナショナリスト武装組織」及び「国際人権団体・国連などによるウクライナ東部の人権状況報告」のスライドが紹介されたが、今回は後者のみだった。よってスプートニク記事には触れられず、訂正や謝罪もなかった。

②れいわ新選組山本太郎不定例記者会見(2022年3月24日) 07:40-18:50
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【街宣LIVE】れいわ新選組presents 山本太郎と桜を見る会 神奈川県溝の口駅デッキ(2022年5月15日)
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また「国際人権団体・国連などによるウクライナ東部の人権状況報告」についても、引用している資料に変更はなく、ゼレンスキー大統領就任前に偏っていることは変わらなかった。

変更点があるとすれば「これ今じゃないですよ、随分前の話です」と前置きしたことだろうか。山本太郎代表は資料が古いことを認識していながら、ロシア擁護ともとられかねない主張を繰り返していることになる。個人的には2019年にHPVワクチンについて情報がアップデートできていないと前置きしながら「人体実験してんじゃね〜よ、って話ですよね」と主張していたことを思い出す。

www.j-cast.com

質問者について

ロシアは救出作戦をしているだけ、というのは Qanon 系陰謀論界隈で何度も目にしたことがある。まあ今やデマを流しているのがロシア大使館なのだから笑えない話だが。

megalodon.jp

また、山本太郎氏の街宣に陰謀論者がやって来ることは珍しくない。以前も Qanon 信者を自称する人物が、3.11人工地震説を主張していたことがある。

今回は質問者の主張が突飛すぎてぼかされているが、質問者の「ロシアはロシア系住民を救出しているだけ」という主張に対して「ウクライナによる迫害はあった、しかし侵攻は許されない」と返している。つまりロシアにも理があることを一部認めている形になっている……と考えるのは穿ちすぎだろうか。

まとめ

ウクライナ東部の人権状況について(日本ではこれまで)知らされてこなかった、という山本太郎氏の主張はある意味で正しい。軍事侵攻による現状変更は禁忌であるということにも、異論を唱える人はいないであろう。

しかし山本太郎氏の資料の選び方はどこか恣意的だ。「双方の話を聴くしかない」と言っているにも拘らず、主張するのはロシア側の言い分ばかりであり、2014年以降もウクライナの主権がロシアによって脅かされ続けていたことが抜けている。

また別の街宣では、米国やNATOが武器供与することによって戦争を長引かせている、戦争を止めるには米国が決断しなければならない、といった主張まで行っている。

山本太郎氏の主張からは、これがロシア対ウクライナの戦争というよりロシア対米国・NATOの戦争と捉えていることが透けて見える。

れいわ新選組は、ロシアに対して「最大限の非難」をしていると主張し続けているが、その実非難声明は出さない、国会非難決議に反対、その他活動が全く伺えないなど、日本において最もロシアに都合がいい国政政党だと言わざるを得ない。

その上、街頭にて陰謀論者の意見を一部肯定し、テレビ新聞への不信感を口にし、恣意的な資料選びで Whataboutism を誘発している。果たしてそれが停戦合意につながるのだろうか。

「わかったようなことを言う人がわかっている気になってるだけ」という台詞は、そっくりそのままお返ししたい。